日本はワクチンの接種率が低く、東京の緊急事態宣言がまた出されたのにも関わらず、オリンピックが開催さえるなどと、不安な気持ちから晴れない状況が続いていますが、アメリカでは、バイデン大統領の国民70%のワクチン接種のゴールには至らないまでも7月4日の独立記念日の後、本格的に通常通りの生活に戻る方向に向かっています。
このコロナ禍は、私たち、Behavioral Scientists(行動科学者)にとって、今までにない大きな社会実験となりました。これまで、このように世界中全ての方々が同時に隔離生活を送るような状況は過去にありませんでした。そしてテクノロジーの発達とともに、自宅勤務ができるために、家で仕事をしながら生活を送る方々も急増しました。 通常生活に戻ることは、今まで通りの生活に一気に戻るのではなく、”New normal”、新たな基準を持つ生活を始めることとなるようです。実は、American Psychological Association (APA)の調査によると、49%のアメリカ人が対面での交流について不快に思う、そして、なんと今年4月には400万人もが仕事を辞めたそうです! 多くの方々は、低賃金の小売店などで働いている人たちだそうで、辞める理由はさまざまなようですが、パンダミックによって人生観についての考えを変え、もっと自分にあった職を探そうと転職に向けて頑張っている方々、そして、自分、または、持病をもった家族の身に危険を晒しながら低賃金の仕事に戻りたくないなどといった理由があります。
社会が復帰したことで、今まで通りに色々な活動に戻れる、子供の邪魔がない自分の仕事場で仕事ができるなどほっとした思いを抱く方々もいますが、その反面、外に出て行動することへの不安を抱く方々も多くいます。コロナのために、私たちは今までにないストレスを感じていますが、一方で、通勤、通学なしで自由の時間が増えた。気の合わない同僚などを対面で接することや、気の進まない社交の場を避けることができるなどという利点もありました。そんな中、広場恐怖症の一つで言われてきた、”Cave Symdrom”を持つ人々が、今回のパンダミック後に増えてくるのではないかと言われています。(広場恐怖症は強い不安に襲われたときにすぐに逃げられない、または助けが得られそうにない状況や場所にいることに恐怖や不安を抱く状態です。)。
このような極端な症状がなくても、マスクなしで外に出ること、マスクをしていない人たちを見ること、対面で交流することに対しての不安感、恐怖心を経験すること、今までのルーティーンに戻ることへのギクシャク感などは、よくある一般的な感情として多くの人々が経験していることですので、ご心配なく。
今後のコロナの影響が完全に消えない中でありがちな心境はこちらです。
1 疲労感を感じるのは当たり前。
コロナでの隔離生活が始まる前の通常生活と比べて、20−30%ぐらいの外での活動でも極度の疲労感を感じてしまうことは当たり前です。例として、オフィス復帰の初日に家に帰った直後に何時間も爆睡してしまった。ショッピングモールに買い物に2−3時間行っただけで、ドッと疲労感を感じ必要以上のことに手がつけられなくなってしまったなどの一説を聞きました。
2 対面での交流対して居心地の悪い思いをする。
久々の対面での交流でギクシャクしてしまう、ワクチンを打った同士でもマスクしないこと事態がおかしいと思うなど、不安に思ってしまうことは当たり前ですので、ご了承ください。多くの方々は何度か対面での交流を重ねることで、このような居心地感は改善されるようです。
3 自分が感じているコロナに関しての不安感は自分だけだと感じる、または、過敏すぎるかもと自分の考え、感情に疑問を抱く。
新しいコロナに関するニュースが毎日出て、CDCや州でのガイドラインが毎週のように変わる中、コロナに対しての危険度は、人ぞれぞれ違います。10人いれば、10通りの安全性についての意見が別れます。特に、現在では孤立しがちですので、自分の考えが違うのかも?自分では納得しがちだけれども、相手に合わさなければと感じてしまうなど、もやもやした、はっきりしない感情を抱きがちです。
* こういった社会の変化によっての心理的な反応へうまく対応していくためには、こちらをお勧めします。 *
1 規則正しい生活をしましょう。(十分な睡眠、バランスの取れた食事、運動をする。) 自覚がなくても身体、コロナでの隔離生活、そして、平常生活に戻っていく過程での変化にストレスを感じています。ぜひ、自己管理をしっかりと。
2 自分の正直な考え、思いを受け止める。 自分の正直な考え、何が一番自分にとって大切なのかなど考える時間を作り、把握する。間違えた感情というものはこの世の中に存在しません。自分の気持ちを批判、偏見な目を見ずにそのまま受け止めてください。
3 自分の感情を信頼できる人と共有しましょう。 一人で考えていると、自分だけがこのような考え、思いを1人で抱いていると考えがちですが同じような考えを持つ方々がいることが多々あります。普段から考えが合う家族、友人と感情を共有することで、不安感が緩和されることがよくあります。
4 時間をかけて、通常生活に近い生活に戻りましょう。 時間をかけてちょっとずつ行動範囲を広げていきましょう。2−3時間、親しく、信頼できる友人の家でのバーベキューに参加する。それから、室内での行動にも安全性を見計らいながら参加してみるなど。多くの企業では一気に毎日出勤させるのではなく、週1回ほど2−3週間オフィスに戻り、週3回出勤をまた2−3週間過ごして、少しずつ従業員を慣らしていくという方針でいくそうです。
5 安全性を考慮した上で、自分の好きな活動に参加しましょう。
1年半以上続いた隔離生活でのCovid Fatigue(コロナ疲れ)は無視できません。人間は、社会動物として他人と交流を持って生活するものです。どうぞ、少しずつ安全に自分の好きな行動へ戻ることで、疲れた自分へのご褒美も忘れずに。
6 自分、家族の中での安全対策ポリシーを作っておきましょう。 家族みんなきちんマスクをして買い物に行っている方々や、今まで通りの生活にほぼ完全に戻り、コンサートや、インドアダイニングなどを毎日のように楽しんでいる方々など危険度についてはさまざまです。こういった中で、おすすめできるのは、自分の中でのコロナについての安全対策をしっかりと作っておくことです。例えば、アウトドアでのダイニングは大丈夫だけど、インドアは控えておこう。ワクチンを打った人たちとだけ交流するようにしよう。買い物する時は、マスクをしよう。など。ワクチンを打てない幼いお子さんがいる家庭と、健康な大人だけの家族では安全対策への考え方、行動範囲が全く違うのは当たり前ですので、事前に自分、家族が納得できるポリシーを決めておきましょう。
社会が少しずつ平常に戻りつつある中、今まで予測していなかった経験、規制、行動そして感情と面することになりそうです。デルタ株の変異種で、ファイザーの3回目のワクチン接種が必要になるかもと言われる中、世界中の多くの国では、ワクチンが1回も打てず、必要な酸素、治療がないために多くの人々が苦しんでいます。このような事態で、軽率な行動のために3回のワクチン接種をするのは、倫理に反するのではないかとの疑問も出ています。そして、最近レストランにいくと、注文が出てくるのがとても遅いと不満を持つ方もいると聞きましたが、一気なご時世の変化で従業員の人手不足でなかなか注文に追いつけないでいる、そして、今まで以上に十行時間が増えているのが現状です。これからも、コロナに関しての状況で何らかのフラストレーションを感じることを認知してください。コロナは世界中の400万人以上もの人々に死をもたらした恐ろしい病気ですが、人の命、人生に対しての考えを改める機会をもたらしす機会をくれました。この問題は全ての人類が一緒になって解決していくもので、お互いに思いやりをもちながら、辛抱強く乗り越えていくものだと信じています。
インザナ裕子
NJ認定臨床社会福祉士
参考
Ember, Sydney. (June 20, 2021). New York Times. “How Do They Say Economic Recovery? ‘I Quit.’” Retrieved by https://www.nytimes.com/2021/06/20/business/economy/workers-quit-jobs.html.
Gross, Elissa R. &Lukin, Konstantin. (April 20, 2021). “Tips for Post Pandemic Life.” Psychology Today. Retrieved by https://www.psychologytoday.com/us/blog/the-man-cave/202104/tips-post-pandemic-life.
Simon, Sarah. (March 22, 2021) “Why You May Feel Anxious About Returning to Normal.”
Retrieved by https://www.verywellhealth.com/anxiety-returning-to-normal-post-pandemic-5116844.
Merck Sharp & Dohme Corp. (2021). DSM マニュアル家庭版. Retrieved by https://www.msdmanuals.com/ja-jp/.